ホントの快適さって、ちょっと違うのですよ
靴の履き心地や快適さって、実際に体験してみないと分からないかもしれませんね
よく巷で使われる言葉に「楽(らく)」があります。
靴で云えば、「楽に履ける」とか「楽な靴、くださ~い」みたいな。
でも、これって、よ~く考えてみると、ちょっと問題があるんですね。
この「楽」という言葉の意味。
カンファタブル(快適な=コンフォートから来ています)とルージー(きつくなく、文字通りラクな)の違いって云えば、分かりやすいでしょうか。
スッと履ける(靴べらを使わないで)とか、どこも当たらない(微妙な表現ですが)というのは、靴で云うとNGなんですね。
例えばヒモ靴でひもが縛ってあるのに、それこそスッと履けたりしてしまえば、それは緩すぎることでありますし、どこも当たらない(触っていない)って云うのは、足がホールドされていないことになるんですね。
昨日も可愛いお子さまや、結構なお歳の方々にも、そのような例が見受けられました。
お子さまの場合、ひもやベルクロ(マジックテープ)もない、それこそスッと履ける靴を履いてこられて、お母さまがつま先が当たって変形を起こしているように見えるってお越しになられたのです。
この靴の場合、計測してみると充分に長さの余裕はあったのですが、足がホールドされていない(とまっていない)ために、歩く度に足が前滑りして、それで常につま先が当たって変形が始まっていたわけです。
2ベルクロでしっかり留められる、ゴアテックスの子供靴です
それで、充分な余裕寸のある、2ベルクロでしっかり留められる靴をはいてもらったっところ、最初は「これ、きつい」とか言っていたのですが、数分もすると「お母さん、この靴メッチャ気持ちがいいよ」ってことになります。
この感覚、と云うか「履き心地」を知らない方(お子さまも大人の方も)が多いのですね。一度知ってしまえば、あとはOKなんですが。
また、ご年配の方も同様にヒモ靴であっても、まったくひもの調節機能を使っておられず、それこそスッと履ける状態になっていました。
それで、お子さまと同じように前滑りしてつま先が当たり、爪が黒ずむようにまでなっていたのです。
それらの間違いの原因の一つは、「面倒くさい」
スッと履けることが良いことだと思っている靴後進国のキーワードでしょうか。
ご病気などでそう云うことが不自由な場合は、それに対応するものもありますが、まったくどこもなんとも無い健常な方々が「面倒くさい」という理由でガバガバの靴を履いていれば、足が痛くなったりトラブルが出てくるのも当たり前って言えるのです。
ほんのちょっと手間を掛けるだけで、見違えるように履き心地がよくなるケースが多いのですね。
そんなことが、靴屋の現場ではよく起きている事件なんですよ。
ほんの少し手を掛ける、時間を使うだけで、とっても快適になるのが、”靴の履き方”なんですよ。
今日はちょっと理屈っぽい話をしてしまいましたが、お一人でも感じていただける方がいれば、我々シューフィッターとしてもうれしいことです。